yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

読んだ本

仕事のなかの曖昧な不安

【仕事のなかの曖昧な不安 ——揺れる若年の現在】玄田有史 中公文庫 ★★★ 2009.12.14 サントリー学芸賞、日経・経済図書文化賞受賞作 一言でいうと、社会構造が若者の仕事や雇用機会を奪っている、という話。 私の職場にも、この本で書かれた内容の具体例をい…

ツィス

【ツィス】広瀬正 集英社文庫 ★★★★ 2009.11.19 SFパニック小説といえるが、やっぱり軽快なので、それほどことの重大さを感じない。けれども、配役が、社会的異分子に見られがちな障害者やハーフ、精神病患者などで固められていて、パニック源の現象とは違う…

【蟻】ベルナール・ウェルベル 小中陽太郎・森山隆訳 角川文庫 ★★★★ 2009.11.16 ウェルベルコレクションⅠ 絶版 ヘルン文庫関係者と会話していて、著者名が耳に留まったので、探し続けて入手した本。蟻の三部作となっているらしいので、また残り2作を探し続け…

完全犯罪 他8編

【完全犯罪 他8編】小栗虫太郎 春陽文庫 ★★★ 2009.11.7 この本は、就職してすぐ買ったか就職活動中に買った覚えがあるから、3年半は自分の本棚で熟成していたことになる。絶版のようでいて、新刊本屋でも偶にお目にかかれる。 一冊全部小栗虫太郎本、という…

99%の誘拐

【99%の誘拐】岡嶋二人 講談社文庫 ★★★★ 2009.11.5 ひと月振りに本を読み切った。 前段後段の2段構成になっているが、それぞれ伯仲の緊迫した疾走感がある。読んでいるのに夢中になって、今どこにいるのかを忘れ、本を読んでいること自体を忘れてしまう瞬間…

シングルモルトを愉しむ

【シングルモルトを愉しむ】土屋守 光文社新書 ★★★★ 2009.10.3 新書で手頃な教科書的な本書を見つけたので、勉強がてら読んでみた。ポットスチル(蒸留器)の型と、ウイスキーの味には関係があることを、漠然と聞き知っていたが、本書を読んで理解が進んだ(…

書斎のワンダーランド

【書斎のワンダーランド】小山慶太 丸善ライブラリー ★★★ 2009.9.30 本の中で展開するサロン(とはいえ語り手は筆者一人)。言葉やジャンルなどのある種のタグでつながる話を、各章毎に展開する。創作物の紹介も多いので、例えば算学を取り扱った時代小説な…

料理の鉄人

【料理の鉄人】フジテレビ「料理の鉄人」編 フジテレビ出版 ★★★ 2009.8.30 チーズ対決が載っているという話を耳にしたので入手。元々好きな番組であったが、チーズを本日の食材に使った回があったとは知らなかった。そのチーズ対決だが、あまりチーズそのも…

迷宮

【迷宮】大西巨人 光文社文庫 ★★★ 2009.9.9 遅々として読まされ、しかし退屈でない小説。文体や言語感覚が特殊な作家であるようだ(たった一語なのでそれを示す適切な例とは思わないが、アメリカ合州国、と書いていたりする)。 ミステリというよりは、謎物…

三三七拍子

【三三七拍子】太田光 幻冬舎文庫 ★★★ 2009.9.11 4頁くらいで終わる嘘混じり(といったら怒られそうだが)のエッセイ。少し面白いことを書くブロガーのブログを読んでいるような感じ。Podcastで爆笑問題のラジオ(の一部分)が配信されていることを半年前に…

改訂完全版 異邦の騎士

【改訂完全版 異邦の騎士】島田荘司 講談社文庫 ★★★★ 2009.8.30 出版は遅かったが、執筆された長編第一作だったという本書。ミックスされたジャンルの豊富さに若々しさを感じつつ、しかし贅沢な作品だった。結局デビューして25作目の作品として出版されたそ…

華氏451度

【華氏451度】レイ・ブラッドベリ 宇野利泰訳 ハヤカワ文庫 ★★★★ 2009.8.23 本好きがたくさん出てくる(中には本を焼かれるなら自身も焼いてくれという人も)が、本嫌いや本に無関心な人もたくさん出てくる。両者の戦いになるわけだが、本好きの肩を持つ…

弥勒の掌

【弥勒の掌(て)】我孫子武丸 文春文庫 ★★★ 2009.8.19 本格ミステリマスターズ 巽昌章が解説で上手いことを言っているが、全くコンパクトな小説。いつもすったか読める我孫子小説のリズムは、久々に触れたが相変わらず堅調で、これだから、新作が出るといつ…

工学部・水柿助教授の日常

【工学部・水柿助教授の日常 The Ordinary of Dr.Mizukaki】森博嗣 幻冬舎文庫 ★★★★ 2009.8.14 Mシリーズ おお、これも「江分利満氏の優雅な生活」と言えそうだ。ただし、当世の代表的日本人の生活が綴られているわけではない。しかし、こういう小説(私小説…

四人の署名

【四人の署名】コナン・ドイル 阿部知二訳 創元推理文庫 ★★★ 2009.7.21 シャーロック・ホームズもの ホームズの2番目の作品らしい。一応長編扱いされているが、180頁くらいなので、長大な作品が巷間に溢れる昨今であるから、中編として感じられる。 テンポ良…

恋恋蓮歩の演習

【恋恋蓮歩の演習 A Sea of Deceits】森博嗣 講談社文庫 ★★★★ 2009.7.27 Vシリーズ 今作も装画の冴えが際立っている。 シリーズ物なので、前作やそれ以前の作を引きずる何かしらはあるが、今作は特に前作の続きを意識した話であった。この傾向は次作にも続く…

江分利満氏の優雅な生活

【江分利満氏の優雅な生活】山口瞳 新潮文庫 ★★★★ 2009.7.9 第38回直木賞受賞作 昭和のサラリーマンの典型を描いた、有名作。酒好きでサラリーマンなら(それに少しでも昭和という時代に追憶するところある方は)、読まない手はないと思う。 職場の男女格差…

光ってみえるもの、あれは

【光ってみえるもの、あれは】川上弘美 中公文庫 ★★★★ 2009.7.12 読みやすいのだけど、今作はあまり好みではなかった。所謂ボーイズラブ的な場面が満載で、僕と花田の関係が、男性の私には現実味がないように思われ、どうにも感情移入できないところがある。…

海峡

【海峡 この水の無明の真秀ろば】赤江瀑 角川文庫 ★★★★ 2009.7.4 第12回泉鏡花文学賞受賞作 エッセイだが、そうと知らず読み進んでいた。破片Aなど、如何にも小説らしく、実話だとすると奇妙な話である。事実は小説より奇なり、とはいうが……(或る無類の本読…

超現実主義宣言

【超現実主義宣言】アンドレ・ブルトン 生田耕作訳 中公文庫 ★★★ 2009.7.4 この本、表紙が良く、1920年代のソビエトの無声映画ポスターを思わせる。その"思わせる"時代は、もちろん超現実主義宣言(第一宣言)がなされた1923年に重なっている。 絵画の方面か…

類推の山

【類推の山】ルネ・ドーマル 河出文庫 ★★★ 2009.6.20 "人間の通常の手段では近づけない"、不可視だが在りうべくして実在する"象徴的な山"への探検記。この小説の設定・試みが既に興味深いもので飛び付いた。小難しいようでいて、軽快で読みやすい。もっとも…

チーズを楽しむ

【チーズを楽しむ】村山重信 丸善ライブラリー ★★★★ 2009.6.15 1998年発行のやや古いチーズのお手軽な入門書(新書(サイズ))。例によって中古で入手したのだが、ページの所々に、食べ物のしみがあって、普通ならあまり気持ちの良いものではないけれど、き…

金色夜叉(下)

【金色夜叉(下)】尾崎紅葉 岩波文庫 ★★★★★ 2008.1.14 色つながりの黄金バットの影響か(全く直撃世代ではないが)、金色夜叉の字面からの第一印象はヒーローものかなというものだったが、見当違いも甚だしかった。 雅文調というのか、今時の小説に比べると…

精神科医になる

【精神科医になる 患者を<わかる>ということ】熊木徹夫 中公新書 ★★★ 2009.6.6 タイトルから、「ブラックジャックによろしく」的な、悩みながら一人前の医者になった(/一人前の医者になるためスタートラインにやっと立つことができた)、というような自伝…

いま、働くということ

【いま、働くということ】大庭健 ちくま新書 ★★★ 2008.8.1 「何のために働くのだろう」=「どう働けば、自分の生は人間として無意味ではなかった、と納得できるのだろう」という問いに立ち向かう書。この本が、よくある働く意味について悩む人々(私もその一…

闇のなかの黒い馬

【闇のなかの黒い馬】埴谷雄高 河出文藝選書 ★★★★ 2008.6.27 第6回谷崎潤一郎賞受賞作 本書は普及版に当たると思う(元版と比べての部数の多少は知らないが)。元版は既に読んでいたが、自身の作品の文庫化を嫌った一面でも有名な氏であるから、本書のような…

現代詩文庫182 友部正人詩集

【現代詩文庫182 友部正人詩集】友部正人 現代詩文庫 ★★★ 2009.5.31 「あれからどのくらい」というライブアルバム(CD)を姉が貸してくれて、それが(特にDisc1が)、こりゃ良いや、という具合に気に入った。確か1年前の今頃のこと。それから半年くらいして…

最後の物たちの国で

【最後の物たちの国で】ポール・オースター 柴田元幸訳 白水Uブックス ★★★★ 2009.5.30 この手紙文の物語は、“私はここにいて、あなたはそこにいる。”の一言に尽きると思う。手紙(や電子メールや電話といった間接的連絡手段)は、あなたと私のそれぞれの世界…

サバイバル!

【サバイバル!––人はズルなしで生きられるのか】服部文祥 ちくま新書 ★★★ 2009.5.21 独りで山に入ると、いろんなことを––特に山に絡んだこと(選りすぐりの装備について、ルート採りについて、各種判断について、他の登山者について、自然破壊について……)…

魂の形について

【魂の形について】多田知満子 白水Uブックス ★★★ 2009.5.14 近頃の新古書店巡りにおいては、ノベルス・新書の棚を検めるのが面白い。狙うは、ほとんどお目にかかれない白水Uブックスや中公クラシックス。白水Uブックスについては、海外小説ばかり狙っていて…