yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

バナールな現象

【バナールな現象】奥泉光 集英社文庫 ★★★ 2005.2.15

 

 鴉、海老、“牧彦”など偏執する対象が多く、その反芻のしつこさ、まわりくどさといったら牛の4つの胃袋を行きつ戻りつする消化液まみれの乾し草の図を思わせる。どうも自分の書く文章に似ているような気が……。もちろん氏のそれは意図的なもので、この小説の目指す一点へ到達するための効果的な手段であった。

 最後の一文以上に、私は338、339頁の見開きに、酷大な“砂漠”を感じた。

 今度は、ジャズ、石、漱石の現れない氏の作品を読みたいけれど。