yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

ベンスン殺人事件

【ベンスン殺人事件】ヴァン・ダイン 井上勇訳 創元推理文庫 ★★★★ 2005.2.27

ヴァン・ダイン処女作

 

 心理的推理を標榜する探偵ファイロ・ヴァンスものの第一作。シリーズものの第一作だけあって、発表当時としては極めて斬新だったであろう(私的にも斬新に感じた)その推理手法を説明するのに、かなりの枚数を費やしている感がある。読者は、ファイロ・ヴァンスを目の前にしては無能な地方検事マーカムと一緒になって事件を通して心理的推理の有効性を感得できる。あるいは衒学装飾の煙に巻かれているだけかもしれないけれど。

 ということで、物的証拠の無価値性が気持ち良い。ファイロ・ヴァンスが、物的証拠を恣意的に用いるだけで、5人もの人物について次々に告発に関する法律的要求を満たしてみせるくだりが、圧巻だった。こういう感じの作品をパズラーというのだろうか。