yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

時の過ぎゆくままに

【時の過ぎゆくままに】小泉喜美子 講談社文庫 ★★★★★ 2005.4.13 絶版

 

 かつて彼女の眼前には、どう進むも自由で、まっさらで広大なエリアが広がっていた。しかし、今になって振り返ってみると、彼女の辿ってきたのはたった一本のラインでしかない。途切れそうに思いながらも意外にしぶとく、長く長く続いてきたライン。いつも自由意志で選んできたつもりのこのラインが、今では彼女の次の一歩を規定する。そこから離れようともがく。引っ付いてきたものを振り落とそうと、またもがく。

 この作品はそういうイメージを伴う人生の血と汗と焦燥の容赦ない短篇集。熟年の観察眼なればこそ切り取れる峻烈な毒と欲望。私が普段見ているものとは恐ろしく違う。それとも同じものなのか。

 イントロの二篇「友を選ばば」「同業者パーティ」が特に厳しい。

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