【山椒魚・遥拝隊長 他七篇】井伏鱒二 岩波文庫 ★★★★ 2005.5.15
某氏が、井伏作品の口語はつげ義春を思わせる(時系列から言えば勿論逆の言いだけが真であり得るが)ということを言っていたのを聞き覚えていて、長らく経って手に取った一冊。
「山椒魚」さえ初読。これほど物語世界が限定された作品を私は他に知らない。
「休憩時間」も舞台の狭い話だが、好きな形をしている。一定の箱(枠組み)があって、中身だけがころころ変わる。カレイドスコープのような。
「へんろう宿」が秀逸。“つげ的”であるし、こういう叙情的経験を引き寄せ、意識的に、また確実に拾い上げる才を羨む。この一篇は時々読み返すようにしたい。