【暗室】吉行淳之介 講談社文芸文庫 ★★★★ 2006.3.15 第6回谷崎潤一郎賞受賞作
吉行氏初読み。川上弘美氏が氏の作品全般を推していたので、読もうと思っていた。
卒業旅行の帰りの機内――そろそろ日本食が恋しくなってきたな、という頃合に読んだのだが、いきなり慈姑(くわい)の話から始まるので、恋しさを後押しされる。
食と性に対して鏡面のようにクール。私小説風な書き口で、一体吉行氏の素行は実際どうなっていたのか、あれこれ憶測を重ねてしまう。
劇的な変化はない。解決もない。状況の緩やかな移行、その様子を描いた作品。
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昔、給食に慈姑ご飯が出るような、慈姑の特産地に住んでいたことがある。