【倉橋由美子の怪奇掌篇】倉橋由美子 新潮文庫 ★★★ 2006.8.17
ギリシア神話や中国古典が引き合いに出される話が、予想通り幾つかあって、「よもつひらさか往還」以後常々まとわり付く既読感を何度か感じながら読んだ。それでも今回の掌篇も相変わらず乾いた語り口でつむがれるために、変な糸を引くことなく、賞味のうちに、最終ページを畳むことになる。
「ヴァンピールの会」「革命」「事故」が良かった。というのは、古典引用が少なく、この本の題に合ってすきっとした怪奇掌篇と感じられたため。「オーグル国渡航記」は黒いショート・ショートで、筒井康隆を思わせる。