【山田風太郎ミステリー傑作選③ 夜よりほかに聴くものもなし <サスペンス篇>】山田風太郎
光文社文庫 ★★★★★ 2007.1.4
このシリーズを読むのは、5つ目になるが、星5つはこれが初めて。山田風太郎は、サスペンスが最も得意なのじゃないかと思う。その上に漂う理不尽や割り切れなさ。読後に感心のため息が出てしまう篇が、数多く収録されている。
中でも「目撃者」が一押し。子どものもつ融通の利かないイノセンスが、無名の一人の男を冤罪に陥れていく。切羽詰ったときに現れる妙な冒険心と、それに反比例する小心とを兼ね備えた、男の普通が哀しい。