【中原中也詩集】大岡昇平編 岩波文庫 ★★★ 2007.1.18
リズムある詩が多い。読みやすい、触れやすい詩。どこかのバンドが使う言葉が、中也の使う言葉のところどころの感触に重なるので、何かしら影響があったのかもしれないと想像。
読む前に知っていたのは、「汚れつちまつた悲しみに」と“ゆあーんゆよーんゆやゆよん”の「サーカス」の2篇だけだったが、この(たぶん)有名な2篇は、意外にも少なくともこの詩集内では、異色作だった。
息子文也の死より此の方の作品は、その大方が青白い静謐なatomosphere(≠atmosphere)に在って、こちら側よりも透過率がやや低いその層越しに読まされるように意識される。さらに創作時期が進み、作風においてお道化る(おどける)ことで、遂に笑えそうで笑えない哀しみを持つ至っているのだが、いつからか、この笑えそうで笑えないもの(その対象はついつい笑ってしまいたくなる(やや嘲笑的に)ものだけれども、それを笑ってしまったら、自分に丸っきりはね返ってきそうで、血の気が引くように笑えなくなるもの)に、強く吸い寄せられている。
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壺だったものをメモしておく。頁数は第31刷におけるもの。
p.90 無題(こひ人よ)
p.124 羊の歌 安原喜弘に (特にIIIIが良い)
p.212 頑是ない歌
p.338 (吹く風を心の友と)
p.375 秋岸清涼居士