【グランド・ミステリー(上)】奥泉光 角川文庫 ★★★★ 2007.7.7
2009.6.12にこの感想を書いているのだが、ぱらぱらと読み返してみても、残念ながら話の筋がさっぱり憶い出せない。
第二章の第一節に面白そうな文章があったので読み返してみた。漱石他の小説に絡んだ会話がなされている。漱石については、剽軽な作品しか読んだことのない私なので、戦時中における漱石の評価は、ここでの会話のように槍玉に上げられるばかりだったろうなあと思う。あるグループを批判しながら、その人自身も実はそこに帰属していることを忘れている姿は、端から見れば心中痛々しいが、すぐ自戒混じりの蟠(わだかま)りに取って代わられる。