yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

死のクレバス

【死のクレバス アンデス氷壁の遭難】ジョー・シンプソン 中村輝子訳 岩波現代文庫 ★★★★★ 2007.12.18

 

 読了後知ったのだが、映画「運命を分けたザイル」の原作はこれだったらしい。

 圧倒的迫力に満ちた記録。両手でしがみつくように本を握って、吹雪の中を行く特急列車で読んだ。

 山に入る前の期待と不安。ピークを目指す時の必死。登頂直後の一瞬の征服感と、今更必要なのかと思いつつの凍えながらの一写。そうしてさて下山時急に立ち上がるのが臆病。迫る日没に焦燥し、鋭さを増す寒。疲労で足がもつれ、腕も上がらない。疲労も極度に達すると、テン場に辿り着くことだけ、それだけが歩を進める力になる。それに、パートナの非情が結果的に我が身の助けになっていたりすることも。止まらない自分の荒い呼吸音だけが聞こえる永遠のような時間の後に、本当に安全な場所に辿り付いたときの安堵。そして、本当に倒れ込むこと以外に何もできないような脱力に襲われ……。

 まあ、そんな感じで、ジョーやサイモンの経験には程遠いレベルながらも、思い出すことがあって、思い切りのめり込んで読めた。ジョーの壮絶、忘れたくない。