yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

五重塔

【五重塔】幸田露伴 岩波文庫 ★★★★★ 2008.4.21

 

 仕事の神様の天啓でも受けでもして、脇目も振らずもう必死で仕事したい、と本当にそう思っているわけでもないけれど、やはり真面目な性格なので、ある種そういう姿にどこか憧れる心がある。

 “のっそり”みたいに自身の短所を見事に弁えて、僅かでも尖鋭抜群の長所を自ら知り、親方、上人、誰彼と人に恵まれ、一世一代の仕事を手に入れ、それを最高の仕事として成し遂げる。親方が“のっそり”に寄せる信頼も計り知れずの篤さ。

 いざ建設場面以前に話の重きをずっしり置いた点、予想とは異なったが、瞠目のプロット。建築(学)のことはよく分からないが、何だかその本質を射ているようにも思える。