【ロング・グッドバイ 寺山修司詩歌選】寺山修司 講談社文芸文庫 ★★★★ 2008.5.4
寺山修司初接触。萩原朔太郎の持つ“哀切かぎりなきえれじい”を、無水エタノールで少々脱水し、更に孤独のフィルムを全身に低温癒着させて、常に背中が見える姿勢を取らせる。そうして、時々は、足穂の一千一秒物語的な、素朴な焼き菓子をぽろつかせる。そんな感じ。
詩を収めた一章が、最上。僕も5月が好きだ。十分に寒さが融けて、萌え出ずる新緑のやわやかさ。
俳句、短歌の二章、三章は、やや難読(読み解きがたい)だったが、自由律多用で、感覚や単語が現代的だったとの印象。まあ本当のところあまり分からない。もう一点、青森、或いは古里(古里は、この瞬間も古びているのだ)が強いテーマとして多く詠まれる。しつこいが更にもう一点、氏は文学者の命日に詳しいようである。歳時記を紐解けば、ずらずら知れるところなのかも知れないが、これは新鮮な視点として自分も意識して、時に覚えていくようにしたい。