【山伏地蔵坊の放浪】有栖川有栖 創元推理文庫 ★★★ 2008.8.31
久しぶりに短篇ミステリを選んだ。スナックの隅で定例会と化した、山伏の地蔵坊が各地で遭遇した事件を元に出題する謎を、出席者であれこれ議論して解いていく、という所謂安楽椅子探偵ものに類する。この辺の詳細なミステリ史における正確な位置づけは、戸川安宣氏の明晰なる解説を是非読まれたい。
お気楽読者としては、現代では特異な出で立ちである山伏が、放浪の先々で事件に巻き込まれるとき、関係者達の間に毎回妙に溶け込んでいくあたりのそつない書き振りが、面白くまた感心ものだった。会話で進む小説は読み易い(例外というか、どうしても相性の悪いものもあるけれど)。