yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

幻想の肖像

【幻想の肖像】澁澤龍彦 河出文庫 ★★★★ 2008.9.6

 

 金融や株式、経済界のニュースは未だに理解できないことが多いけれど、保険世界最大手のAIGの経営危機に、米政府より巨額な公的資金投入するとかいう今日ニュースは、えっあのAIGが……と思えるところがあった。というのは最近、AIGグループが所有する美術コレクションの展覧会を、富山県立美術館に観に行ったからである。19世紀後半からの印象派から20世紀初頭のエコール・ド・パリ(直訳するとパリ派。当時パリに多く新進気鋭の画家が集まりかつてない絵画表現を次々と切り開いていった)にかけて、代表作家の作品を分かりやすく時系列的に展示したものである。この特別展示だけでも十分良かったのだけれど、エコール・ド・パリ以降の近代絵画が、常設展示されていて、こんな素晴らしい美術館が、富山にあったとはなあ、と驚いたものである。常設展示の中には、私が最近特に気になっている、マックス・エルンストの作品もあり(「森と太陽」など数点)、突然の風に吹かれて……それは感動ものだった。

 さて、この本は上記展覧会に行く前後の期間に読んだのだが、中世、ルネサンス期の、主に女性の肖像画を、一画家一作品、4ページくらいの澁澤氏の自由闊達な解説で、ずらずら紹介しているだけの本である。だけれど、氏の作品の選択眼が良いのか、一様でないコケットリーの迸り、謎の有無がまず謎である判じ物めかせた絵の構成・人物の姿態の演出など、視線をぐっと吸い取られる絵が、実に36枚も(イヨッ!)収録されており、贅沢な本である。

 ただし、ほとんどの作品がモノクロ印刷。良いように解釈すると、興味を覚えた画家については、本屋で画集をみたりと読後も引き擦れる楽しみを与えてくれる。本書後半、中世画のネタが尽きてきて、近代画が採り上げられてくるが、ここにもエルンストの作品(「花嫁の衣装」)があり、これは、本屋で色彩を確認、毒々しい魔性を感じた。

 

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 ・ボッシュ(ボッス)「悦楽の園」の絵は、「山田風太郎ミステリー傑作選①」光文社文庫の表紙にも使われている。

 ・読んだことはないが、池上永一著「シャングリ・ラ」単行本の表紙には、エルンストの絵「雨後のヨーロッパ」が使われている。

 

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 私の場合、現代美術館より、近代美術館の方が、何というか、カンタンな気持ちで観賞できる。

 

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 AIGグループなど、金持ち氏や金持ちグループが経営危機に陥った場合、色んな美術品が散逸する(統一的な、或いは、系統的なコレクションが、競売に出されるなどし、個別に私有化されるなど)危険性はあるかも。(それで、私など一般人が本物を見る機会が減ってしまったりするとか……無駄な心配だろうか。)

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