【政治家の文章】武田泰淳 岩波新書 ★★★★ 2009.4.2
少し硬いタイトルだが、武田泰淳氏著ということで目につき、読んでみた。
いずれも戦争を経験した政治家の文章を取り扱う。信念という鉄板を有した(その人物なりに)正直者の文章やら、現役を退き脇の甘くなった文章やら、さまざまあって、しかも普段の私が(内容的にも風合いにしても)触れること少ない種の文章であるから、新鮮に映り、あっという間に読み終えた。武田泰淳氏のおずおずとした解説も、当時同時代的に批判/批評をしなかった/できなかった引け目(引け目とは少々言い過ぎの感もあるもののこれに代わるより適切な語彙を持ちません)や、本書をものす段になっても政治に対するこれだという判断基準を持てないでいる様子が、まざまざ滲み出ており、私のように政治に疎い者の、まずは氏と一緒にわずか一歩の距離であっても政治家諸氏に近寄ってみようか、との、気紛れな発心の良き伴侶となってくれる。
素人目にも文学者に傾いている近衛文麿の段が、特に面白く読んだ。
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・p.57 (文化人風の)秀才の安心
・p.59 国士型→行動派、教養型→観察派
・p.101 「文学などに熱中していた頃は、それだけが精神的なものと考え、(中略)、要するにそういう言葉の中に棲んで色々ともてあそんでいるのだね。しかし実際は政治でも実業でも、その中に深く精神的なものをふくんでいる。」
・p.127 忍耐することは、外界をがんこにはねかえすこと
・p.172 人間の原色