yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

魔の山(下)

魔の山(下)】トーマス・マン 関泰祐・望月市恵訳 岩波文庫 ★★★★★ 2009.3.14

 

 或る船の中で、読み終えた。晴天の霹靂に触発され飛び出して行ったハンス・カストルプ見た様な、たぶん丁度、自宅を出てどこか飛び出して行きたい、行くべきタイミングだったように思う。ただ私の場合、二度と還らぬ類いのものではないけれど。この3月中旬より、何度かせっせと飛び出してみている。

 長い小説だから、どうしても読者の実経験(いつどこで頁を繰っていただろうか、また小休止とて読まない間に何をしていただろうか……)に、小説内容がしっかりと組み込まれる。私物化を高らかに宣言したくなるようでもあり……。誰が読んでも血肉にとなる何かしらを得よう。恥ずかしながら、しかし、はっきり書いておきたいのは、私には、まるで私のことが書いてあるように思え、戦慄と共に上巻より下巻の2/3まで読んだこと。残りの1/3で緩やかに離れた。