yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

金色夜叉(下)

金色夜叉(下)】尾崎紅葉 岩波文庫 ★★★★★ 2008.1.14

 

 色つながりの黄金バットの影響か(全く直撃世代ではないが)、金色夜叉の字面からの第一印象はヒーローものかなというものだったが、見当違いも甚だしかった。

 雅文調というのか、今時の小説に比べると、華美華麗、ぱっと見にハードルの高そうな文体だが、樋口一葉あたりと比べると(初回の年は「たけくらべ」1895年〜、「金色夜叉」1897年〜)ずっと読みやすいように思う。七五調のように、分かりやすい調子がふんだんに盛ってあり、波乗りの要領でほいほい読める。

 雑誌に篇毎に分けて連載されたようで、その影響がかなりあるのだろうが、各篇の幕切れに圧倒的な物語の山が用意されている。(次篇への興味を)徹底的に引っ張られるから、これを連載で当時読んでいたら、毎篇読了後、次の雑誌の刊行日までの永遠を思って、身悶えと惚(ほう)けを繰り返し分裂症状を呈するに至っただろう。特に、続篇の最後、夢の場面など涕泣必至。ただダメな男向けのつぼかもしれない。

 未完の作とされるが、どうだろう、佳き未来を感じさせる今の続続(←篇の名称)までで完結としても全く不満は感じられなかった。これについては「スラムダンクの湘北-山王戦の次を描けるか」という話を類想するが、とにかく足りている、これ以上の贅沢は言うまい、と思う。

 年始に読む本に当たりが多い。時間があるから、ストックの中でも普段手を着ける気になりにくいどっしりした本を選ぶことになる。そのためだろう。

 

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 上巻

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