【華氏451度】レイ・ブラッドベリ 宇野利泰訳 ハヤカワ文庫 ★★★★ 2009.8.23
本好きがたくさん出てくる(中には本を焼かれるなら自身も焼いてくれという人も)が、本嫌いや本に無関心な人もたくさん出てくる。両者の戦いになるわけだが、本好きの肩を持つ私であるから、好きなものを間に挟んだ両者の理解と無理解の対立が、あまりに痛切で、泣き顔で読み進んだ。
関心のない者の気を惹いたり気を変えるのは全く難しい。だが、ビーティのような本嫌いであれば、そこに関心はある(あるいはあった)のである。ビーティのような自立した本嫌いは、むしろ結構なことだと思う。可哀想な、無関心、ミルドレッド!
私も一冊か、あるいは一章くらい——例えば、“歩く「華氏451度 第一部」”とでも呼ばれて差し支えないような、読み込み方をして、来るべき終末と再生の転換時に備えても良いかもしれない。とは、ちょっと大げさだが、もう少し本の読み方をさまざま試行しても良さそうだと思わされた。