【蟻】ベルナール・ウェルベル 小中陽太郎・森山隆訳 角川文庫 ★★★★ 2009.11.16 ウェルベルコレクションⅠ 絶版
ヘルン文庫関係者と会話していて、著者名が耳に留まったので、探し続けて入手した本。蟻の三部作となっているらしいので、また残り2作を探し続けよう。
人間世界と蟻の世界が交互に物語られていく形式。人間世界は退屈で、答えを引っ張るマッチパズルも5秒程で解けた。しかし蟻の世界については、よくぞ語り続けたと思う。想像力をかき立てられる。蟻による発明——モノの発明から、社会的な/関係性の発明など——がなされる場面は、特に面白い。まさか生物兵器まで登場するとは。
エドモン博士の奮起的な驚異の実行力を思うと、先に読んだ小栗虫太郎「完全犯罪 他8編」所収の「寿命帳」における広津理学士の何ともいえぬぬらくらさ加減が、対照的で、妙に思い出されてくる。