【鳥——デュ・モーリア傑作集】ダフネ・デュ・モーリア 務台夏子訳 創元推理文庫 ★★★★ 2010.2.5
(観たことないのですが)ヒッチコック監督の映画化作品で有名な「鳥」が気になっていたことで目に留まり、入手してみた一冊。ところが、これが大当たりで、傑作集の名に恥じぬ、傑作揃いの一冊だった。長篇にも書き直せそうな潜在力を感じさせるバラエティに富んだ材料に対し、一通りでない転がりを見せる物語展開。強い情念を感じる筆は、閨秀作家ならではのものかと。変に物語が閉じない作品が半分くらいあって、恐怖なり困惑が揺々と残響する。
「モンテ・ヴェリタ」なる一種の山岳小説がめっけもんであった。「類推の山」のデュ・モーリア版というか。この類いの、言わば空想山岳小説が、もっと読みたいものだ。