yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

ペニス

【ペニス】津原泰水 双葉文庫 ★★★★ 2005.3.25

 

 強烈強大な執(しゅう)を伴う妄想の世界。ぬめりある水を湛え、長い藻が幾重も絡みつく言海を掻き分け泳ぐような通読感。これが最初から最後まで続く畏怖。ゆたゆたと進むしかないので、感覚だけが暴走したような気にさせられ、痛みを始め、恍惚、愉悦といった感覚をいやが上にもじっくり味あわされることとなる。こういう小説は初めてだ。そして氏の作品は相変わらず私の神経を逆撫でにする。

 ラフロイグとオルメカテキーラの味を知っている点は有利に働いて良かった。チャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番》は、偶然にも自宅の車の中にMDがあったので聴くことが出来た。

 他律的に小説的な読み方をされうるなにかであっても自律的な小説そのものではありえない(377頁)、という文が印象に残る。