yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

夢の通い路

【夢の通い路】倉橋由美子 講談社文庫 ★★★ 2005.11.25 桂子さんに既視感があるなと思ったら、やはり「よもつひらさか往還」でも桂子さんはいた。同一人物のようでもあり、そうでない感じも受ける。その曖昧さは村上春樹氏の“ぼく”のような面白さがあるけれど…

薔薇幻視

【中井英夫全集[12] 薔薇幻視】中井英夫 創元ライブラリ ★★★★ 2005.11.24 薔薇ならぬ薔薇の旅と、香りへの旅から成る言わば精神紀行記。非常に流麗な文体は、冷やっこくて這うように香う。特に章の切れの文。余白に儚く溶ける。 私なりに理解したところに…

阿部一族 他二篇

【阿部一族 他二篇】森鴎外 岩波文庫 ★★★★ 2005.11.18 武士ものとも言うべき三篇。情けと義、忠、生き死に、名と恥、信念の全う。そういったテーマが強烈に鏤(ちりば)められている。「興津弥五右衛門の遺書」によって、当時の殉死の正当性が描かれ、続いて…

あるようなないような

【あるようなないような】川上弘美 中公文庫 ★★★★ 2005.11.18 再読 一度読んだ個体をあろうことか失くしてしまったので(全くの失態だ)、100円で見つけてきた当個体を読んで、長らく隙間の出来ていた本棚の指定席に納めることが出来わけだった。本棚には読…

不可能犯罪捜査課

【カー短編全集1 不可能犯罪捜査課】ディクスン・カー 宇野利泰訳 創元推理文庫 ★★★ 2005.11.18 10篇を収める。翻訳物で短篇ミステリというどちらかと言えば二重に苦手な作品だが、1篇当たりのページ数が短いので何とか手に取ってみた。 「新透明人間」は、…

光車よ、まわれ!

【光車(ひかりぐるま)よ、まわれ!】天沢退二郎 ブッキング ★★★★★ 2005.11.11 天沢氏初の長篇作品。私が氏の長篇を読むのも初だ。 先に読んだ「闇の中のオレンジ」と大いに重複する道具立てが気にはなるものの、矢張り長篇ならではのしっかり筋の通ったス…

バルーン・タウンの殺人

【バルーン・タウンの殺人】松尾由美 創元推理文庫 ★★★ 2005.11.9 入手しづらいハヤカワ文庫版があったが、こちらの版元で再版されて俄然読む気になった一冊(きれいな状態のハヤカワ文庫版はそうそう見つからなかったのだった)。 人工子宮利用が普通になっ…

山田風太郎ミステリー傑作選② 十三角関係 <名探偵篇>

【山田風太郎ミステリー傑作選② 十三角関係 <名探偵篇>】山田風太郎 光文社文庫 ★★★★ 2005.11.4 堕胎医でちんばで名探偵の荊木歓喜(いばらぎかんき)先生の活躍9篇。気ままな酒呑みで飄々とした性格、他人様の悪の詮索を嫌い、基本的に事件に積極的にタッチ…

ゆっくりさよならをとなえる

【ゆっくりさよならをとなえる】川上弘美 新潮文庫 ★★★★★ 2005.10.29 3ページほどの掌エッセイがたんまり。しかもどれも粒より。雑文書き(?)の一人として、毎回このような文章が書けたら良いなと思うけれど。まあそう思わせるのが、巷間に溢れる私を含め…