2008-01-01から1年間の記事一覧
【夢野久作全集8】夢野久作 ちくま文庫 ★★★★ 2008.11.17 「瓶詰地獄」「キチガイ地獄」「少女地獄」の“地獄”もの(?)や「狂人は笑う」など、“狂人”や“病院”を積極的に扱った作品を収める。タイトルが秀逸なのは「一足お先に」。「崑崙茶」はこの巻にあっ…
【聊斎志異(下)】蒲松齢 立間祥介編訳 岩波文庫 ★★★ 2008.11.6 下巻は、閨と狐と絶世の美女がてんこ盛りであった。あまりにも何度も絶世の美女が出てくるので、この世は何回りしたのだろう、という感じ。それにしても、今の中国のイメージからすると、性的…
【思考の整理学】外山滋比古 ちくま文庫 ★★★ 2008.11.14 あまり売れているような本で、しかも実用書的な本は、普段ほとんど読むことはないのだが、この本はたまたま奥付を見たところ、かれこれ25年も前の本だということで、意外に時の洗礼(本書でいう時の試…
【ミステリー映画を観よう】山口雅也 講談社文庫 ★★★ 2008.10.30 ミステリ関係のレアアイテムのコレクションや逸話を紹介するエッセイ。写真が盛り沢山。 映画や映像作品に関しては、クイーンやカーの作品の紹介が多く、彼らの作品をほとんど読んでいない私…
【悪魔のラビリンス】二階堂黎人 講談社文庫 ★★★★ 2008.10.5 二階堂蘭子シリーズ 活劇的ミステリ。私には、その実は詳らかでないが、乱歩の明智小五郎ものがまさにこんな読み味なのだろうと思う。 第一部の奇術的トリックは、名探偵蘭子の親切なトリック解説…
【その言葉を】奥泉光 集英社文庫 ★★★★ 2008.10.27 絶版 奥泉光の初の小説本(その前に学術翻訳本を出したことがあるとのこと)ということで、いち早く読みたく思った時点で、とっくのとうに絶版化していて、新刊本屋でも見かけることなく、長らく古本屋を巡…
【幻想の肖像】澁澤龍彦 河出文庫 ★★★★ 2008.9.6 金融や株式、経済界のニュースは未だに理解できないことが多いけれど、保険世界最大手のAIGの経営危機に、米政府より巨額な公的資金投入するとかいう今日ニュースは、えっあのAIGが……と思えるところがあった…
【タンブーラの人形つかい パーミリオンのネコ2】竹本健治 ハルキ文庫 ★★★ 2008.7.11 前作同様、テンポ良し。ぴゃーっと読み切れた。ジャンルはSFアクション。 頭の使い方が勝負を決する点、やっぱりジョジョを思わせる。(仮にネコ側をそう呼ぶとすると)…
【酒はなめるように飲め】北沢恒彦 SURE ★★★ 2008.9.14 【酒はいかに飲まれたか】山田稔 SURE ★★★ 2008.9.14 2冊一組、分売不可の本 京都の或る書店で、タイトル買いしたマイナな本。ISBNはないようだ。 一冊目は、北沢恒彦氏の、師にして戦友である中山先生…
【秘密結社の手帖】澁澤龍彦 河出文庫 ★★★ 2008.7.8 秘密結社も時代の流れと共に、このような300数ページに亘る本が書かれる程に、その秘密は暴かれてきたわけである。まあとにかくこの河出文庫の澁澤龍彦コレクションは、知らない知識・情報が大変密に盛り…
【ノヴァーリス作品集Ⅰ】ノヴァーリス 今泉文子訳 ちくま文庫 ★★★ 2008.8.26 ノヴァーリスが気になり出したのは、奥泉光「ノヴァーリスの引用」を読んだあたりで、ノヴァーリスに「青い花」という代表作があることを知り、また一方でつげ義春「紅い花」とい…
【山伏地蔵坊の放浪】有栖川有栖 創元推理文庫 ★★★ 2008.8.31 久しぶりに短篇ミステリを選んだ。スナックの隅で定例会と化した、山伏の地蔵坊が各地で遭遇した事件を元に出題する謎を、出席者であれこれ議論して解いていく、という所謂安楽椅子探偵ものに類…
【目まいのする散歩】武田泰淳 中公文庫 ★★★★ 2008.8.8 第29回野間文芸賞受賞作 「富士日記(上)(中)(下)」や「犬が星見た」と併読するとより楽しめる(んじゃないかと思う)一冊。「富士日記」では、極偶にしか、一人称でその顔を出さない泰淳氏だが、…
【シャーロック・ホームズの生還】コナン・ドイル 阿部知二訳 創元推理文庫 ★★★★ 2008.8.5 シャーロック・ホームズもの 約三年振りに読み進むホームズ譚。 読んでいて面白いのは、暗号ものである「踊る人形」だったが、丸きりポオの二番煎じというところは忘…
【パレード】川上弘美 吉富貴子・絵 新潮文庫 ★★★ 2008.6.23 「センセイの鞄」の外伝。ツキコさんの幼少時のエピソードが披露される。 語られることの一つにいじめが据えてあり、見て見ぬ振りをする事なかれ主義の人(子)の心理描写がリアルで、心がずきず…
【くさいはうまい】小泉武夫 文春文庫 ★★★ 2008.6.28 そうして、では具体的な世界の発酵食品に関してもう少し知ってみようと思い、読んでみた一冊。氏は、本書の他にも、発酵食品や臭い食品、不味い食品に関するエッセイを多数著しているけれども、あちこち…
【クリムト――世紀末の美】ラ ミューズ編集部編 講談社文庫 ★★★★ 2008.7.31 文庫ギャラリー 今は行方知れずのR氏が、クリムトの「接吻」に(敢えて書くなら魂を)何度も救われたと言っていた。私もこれまでにも良くこの「接吻」の男女のバストアップでのカッ…
【すべては消えゆく】アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ 中条省平訳 白水Uブックス ★★★★ 2008.5.7 叙に徹する。流れる。滔々と。流れる。DNA2重らせんを構成する男女の接触、回旋。 ウイスキーロックで、(氷が融けてきて)もやが走るが、あのもやが好…
【ローウェル城の密室】小森健太朗 ハルキ文庫 ★★★★ 2008.7.27 本裏のあらすじだかにも書いてあるけれど、なかなかの問題作なトリックを使ったミステリとの評判を耳にしていたので、期待して読んでみた。結論、結構面白くかつ許容できるトリックだったと思う…
【このダジャレで生きのびろ!】多治家礼 ハルキブックス ★★★ 2008.7.18 トイレに置いておいて、どれだけ経ったことか、やっと読み終えた。壁につけるトイレットペーパーの蓋の上は、文庫本にはやや不安定だが、新書サイズの本は安定しておけるのだ。 最初の…
【大つごもり・十三夜 他五篇】樋口一葉 岩波文庫 ★★★ 2008.6.20 表題の有名な2篇は、一葉の作品のなかでもどうも言葉遣いが特に難解に感じられ、解説の助けを借りて、内容のおおよそを掴むが精々、堪能できずじまい。しかし、以下の2篇は良かった。 「ゆく…
【東京に暮す 1928―1936】キャサリン・サンソム 大久保美春訳 岩波文庫 ★★★ 2008.5.24 岩波文庫の青もの(背表紙が青のもの)は、何だかこましゃくれた、いやいや、偉大な思想書が多いので、手を付け難いオーラがある(ように私的には思う)が、これは全ての…
【最後の瞬間のすごく大きな変化】グレイス・ペイリー 村上春樹訳 文春文庫 ★★★ 2008.6.16 えらく読むのに苦労した。最近は、短篇集を次々に手に取り、その日その時の気分で適当に読んでいるのだが、その内の一冊であるこの本は、いつ読み始めたかもう忘れた…
【ルピナス探偵団の当惑】津原泰水 創元推理文庫 ★★★ 2008.6.4 学園物(?)の連作的短編ミステリ。何だか久しぶりにスムースな読書を楽しめた。 所々、壺な豆知識が出てきて飽きない。例えば、ペルノー。調べてみると、ハーブリキュールの一種、芳香が強烈…
【パリの酒 モンマルトル】オキ・シロー 扶桑社 ★★★ 2008.5.28 京極夏彦は妖怪小説を書くが、オキ・シローはカクテル小説を書く。最近では、カクテルに限定しないが、やはり酒に関する小説やら何やらを書いているようだ。本屋で、酒の棚を見にいったときに、…
【東西不思議物語】澁澤龍彦 河出文庫 ★★★ 2008.6.5 新聞(の日曜版か)にコラム的に連載していたものらしく、収録全49篇、歯切れ良く読ませてくれる。この河出文庫の澁澤龍彦コレクションの第一冊目としての位置するが、確かに丁度良い。既に先に何冊か読ん…
【銀座バーテンダーからの贈り物】稲田春夫 パピルスあい ★★★ 2008.5.15 バーテンダーへの憧れが変に("偏に"とも書けそう)高まってきたので、試しに(ハードカバーで)買ってみた。 面と向かって注文を聴いて、期待に応えられるカクテルやその他ドリンクを…
【法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー】法月綸太郎編 角川文庫 ★★★ 2008.5.13 氏の短篇集「パズル崩壊」と同じような読み心地の作品が多く収録されている。つまり、変化球的なミステリが多い。あんまり、肩肘張って読むとまともに取り合ってくれないの…
【ロング・グッドバイ 寺山修司詩歌選】寺山修司 講談社文芸文庫 ★★★★ 2008.5.4 寺山修司初接触。萩原朔太郎の持つ“哀切かぎりなきえれじい”を、無水エタノールで少々脱水し、更に孤独のフィルムを全身に低温癒着させて、常に背中が見える姿勢を取らせる。そ…
【五重塔】幸田露伴 岩波文庫 ★★★★★ 2008.4.21 仕事の神様の天啓でも受けでもして、脇目も振らずもう必死で仕事したい、と本当にそう思っているわけでもないけれど、やはり真面目な性格なので、ある種そういう姿にどこか憧れる心がある。 “のっそり”みたいに…