【鴉】麻耶雄嵩 幻冬社文庫 ★★★ 2005.4.2
「バナールな現象」、「ペニス」と鴉に彩られる作品が続いたので、好機かと思い読んでみた一冊。
この村は何処にあるのだろう。筑前煮、博多人形という単語が出てくるので、九州北部辺りに設定してあるのだろうか。桃源郷とはいえないまでも、外界から孤立し、かつ独自の信仰を持つ謎めいた村なのだから、珂允の俗世の言葉・概念をあまり交えることなく、軟らかいタッチで雰囲気を描いて欲しかった。ただ氏の作品はいつも非情なので、そういう努力を払っても結局最後に作品世界が破壊されるんだろうと構えていると、やはりその通りになった。トリックのパンチが弱く、カタルシス(意外性からくる驚き)のない破壊に終わったのが残念だ。