【パリの酒 モンマルトル】オキ・シロー 扶桑社 ★★★ 2008.5.28
京極夏彦は妖怪小説を書くが、オキ・シローはカクテル小説を書く。最近では、カクテルに限定しないが、やはり酒に関する小説やら何やらを書いているようだ。本屋で、酒の棚を見にいったときに、偶々発売して間もない本書を見つけ、つい買ってしまった一冊。
バー、カクテル、男、女、と揃えば、何となくしぶいストーリィばかり取り揃えているように思われるが、そのような単純な読者の期待は大抵外される。しかし、そりゃそうだろう。というのは、ベタなものばかり書いては、作者自身がつまらなくなるだけだ(「バースデイ・ストーリーズ」で、編者の村上春樹氏がこれに通じるようなことを書いていた記憶がある)。そういうわけで、すらりと高いバーチェアから、ずっこけるようなオチの作品が多かったりもするけれど、全般にカクテルやリキュールの歴史や製法等々勉強になる情報ふんだんで、これでもとが十分とれたように思う。
シャルトルーズを使ったカクテルを一度どこかで試してみたい。