yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

幻談・観画談 他三篇

【幻談・観画談 他三篇】幸田露伴 岩波文庫 ★★★ 2005.9.10

 

 幻談の名に惹かれて(前にもそんなことがあった)、幸田露伴初読み。

 粋を解する人物とみた。釣り、骨董、魔法(まじない・神がかり的なもの)など、大変に詳しくしかも軽妙に書き綴る。蘊蓄を大いに取り込んだ作品が並ぶが、この種の作品の中では小説らしい顔をした「幻談」と「蘆声」が良かった。これらは解説にもあるが確かに特別扱いの感がある釣りを扱う。好きなものは口語で縦横に語らせるのが一番、という印象。

 「観画談」は蘊蓄と唯一離れた作品。真っ暗闇の雨の中を若い僧に先導されて行くシーンで、かぎかっこを使わない会話の文字が、雨の闇夜との間(あわい)に溶け、心細くて良かった。