【日輪・春は馬車に乗って 他八篇】横光利一 岩波文庫 ★★★★ 2007.1.24
「機械」の独特の文体をのことを耳にし、それを読まんがために買った一冊。その「機械」だが、刹那的な感覚を丁寧に見つめ取り、書きほぐすことに成功した氏の体力と精神の太さに感服。平野啓一郎の「日蝕」のどこかにみた記憶のある、同じ種類の笑いを、こちらは多分に含んでいる(笑いの多少と作品の優劣の関係を言っているのではない)。
「日輪」は、神代の会話のリアリティというか、そうであったのではないかと思わせる説得力を備えた筆が、静かに挑戦的である。
氏は新感覚派と呼ばれたようだが、「花園の思想」では特に眩しい描写が満載。病床の妻を抱き上げ、「まるで、こりゃ花束だ」なんときたものだ。