yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

山田風太郎ミステリー傑作選④ 棺の中の悦楽 <悽愴篇>

山田風太郎ミステリー傑作選④ 棺の中の悦楽 <悽愴篇>】山田風太郎 光文社文庫 ★★★★ 2008.4.4

 

 無茶な設定を成立させてしまう言い訳の筆力がずば抜けている。所収作では、表題作や「誰も私を愛さない」、また、既読の「十三角関係」でも見られたが、章毎に巡る巡る話で、その手腕が本当に良く分かる。

 凄愴の冠に最も相応しいのは、「わが愛しの妻よ」かと思う。ただ、妻が最後に狂うところまでは書かないほうが良かったかもしれない。ひどい話だがその方がより凄愴。

 山田風太郎は、人間を実に多面的に、抉る(えぐる)ように描き出す。そういう作品が何作も何作もあり(このミステリー傑作選を読んでいるだけでも!)、読んだことのある作家の中では誰よりも“巨人”的。