yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

2008-01-01から1年間の記事一覧

岩壁よ おはよう

【岩壁よ おはよう】長谷川恒男 中公文庫 ★★★★ 2008.4.21 “山は自己表現だ。自分が一歩前に進まなければ決して登れない。” 山は眺めているだけでは何も分からない(まあ、本も同じかも知れぬ)。 何だか知らないうちに遮二無二登って、変な自信に満ち溢れる…

センセイの鞄

【センセイの鞄】川上弘美 文春文庫 ★★★★ 2008.4.14 第37回谷崎潤一郎賞受賞作 更に続けて、愛をテーマに本書を手にとって見た。でも、「「愛」のかたち」よりは、恋愛寄りだろうとの予想。そして予想通り。 私はセンセイに憧れる。歳を重ねたときにセンセイ…

「愛」のかたち・才子佳人

【「愛」のかたち・才子佳人】武田泰淳 新潮文庫 ★★★ 2008.4.12 絶版 ここら少し愛をテーマに読み物を選ぼうと思って、まず手に取った一冊。 「「愛」のかたち」が、その狙いに最も照準があった一篇だった。多数の登場人物、その誰もが愛のあるべき姿を明確…

中国怪異集

【中国怪異集】鈴木了三訳編 現代教養文庫 ★★★ 2008.4.12 絶版 突拍子もない展開と、幕切れのヒラリマント。出てくる登場人物、動物、怪物はそれぞれ素朴だったり、一本気のあるものが揃って、珍妙な味わいの怪異集。時代はさまざま、こういった民話なり都市…

山田風太郎ミステリー傑作選④ 棺の中の悦楽 <悽愴篇>

【山田風太郎ミステリー傑作選④ 棺の中の悦楽 <悽愴篇>】山田風太郎 光文社文庫 ★★★★ 2008.4.4 無茶な設定を成立させてしまう言い訳の筆力がずば抜けている。所収作では、表題作や「誰も私を愛さない」、また、既読の「十三角関係」でも見られたが、章毎に巡…

幽霊たち

【幽霊たち】ポール・オースター 柴田元幸訳 新潮文庫 ★★★★ 2008.3.31 ニューヨーク三部作 ものに置き換えることができたら、いかにも“現代”美術館に展示されていそうな作品。今っぽさを感じる。もう少しキーワードに落とし込むなら、匿名性、無臭、ドライ、…

殺戮のための超・絶・技・巧

【殺戮のための超・絶・技・巧 パーミリオンのネコ1】竹本健治 ハルキ文庫 ★★★ 2008.3.28 一篇という形ではなくて、"一冊"をぱっと読み切る体験をしたくて、手頃かなと思い読んでみた。確かに手頃だった。 漫画原作の位置づけだったものということで、ドン…

黒魔術の手帖

【黒魔術の手帖】澁澤龍彦 河出文庫 ★★★ 2008.3.22 怪しい図版は見ているだけで面白いし、各章とも20頁くらいだから章単位で何かの折にぱっぱっと読み切れるので、最近は澁澤氏のエッセイ(の在庫)がどんどん増えている。 いつだって先駆者には畏れ入る。名…

血と薔薇 コレクション1

【血と薔薇 コレクション1】澁澤龍彦責任編集 河出文庫 ★★★ 2008.3.15 エロティシズムと残酷の綜合研究誌 思想が結実した巻頭の「「血と薔薇」宣言」がまずもって良い。 執筆人豪華。ただし、エロティシズムまたは残酷(或いはその両方)の系に列するマニア…

今夜はパラシュート博物館へ

【今夜はパラシュート博物館へ The Last Dive to Parachute Museum】森博嗣 講談社文庫 ★★★ 2008.3.15 初出がメフィストである作品が多かった所為もあろう、ミステリィ仕立ての作品が多かった。また、前半3篇はサービス精神大盛りの感じ。ところどころに鋭利…

双月城の惨劇

【双月城の惨劇】加賀美雅之 光文社文庫 ★★★ 2008.3.2 二階堂黎人氏がよく推していただけあって、氏の「悪霊の館」などの読み心地を彷彿とさせた。光文社文庫の「新・本格推理」シリーズでいくつか読んだ加賀美氏の短篇の完成度に比べ、やや冗漫な印象はある…

発酵

【発酵 ミクロの巨人たちの神秘】小泉武夫 中公新書 ★★★ 2008.3.2 自身のチーズブームを一端緒として発酵食品礼讃の精神から手に取った一冊。ところが発酵が関わるところは、所謂"くさいはうまい"の類の食品のみに留まらず、多種の化学物質生成工業にも応用…

狼の太陽

【狼の太陽】アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ 生田耕作訳 白水Uブックス ★★★ 2008.2.24 手首をひしと掴み離さで引き廻す脅迫的な先導だったり、望みもしないのに背中を間断なく際限もなく全的に押す河流だったり(普通は溺れます)、そういう運命の…

海神別荘 他二篇

【海神別荘 他二篇】泉鏡花 岩波文庫 ★★★ 2008.2.16 表題作、何か既読感が拭えなかったが、やはり以前に読んでいて、あるフレーズで確信に変わったのだった。最後の場面、(話の)風呂敷がびりっと破かれたそうになりひやっとさせられるが、するりと流水のよ…

813

【813】モーリス・ルブラン 堀口大學訳 新潮文庫 ★★★ 2008.2.17 アルセーヌ・ルパンシリーズ 「奇巌城」の後の冒険。創元推理文庫では、出ていない作品なので、間違えて先に、「金三角」を読んでしまっていたのだが、やっと本作品を読むことが出来た。た…

美神たちの黄泉

【美神たちの黄泉】赤江瀑 角川文庫 ★★★★ 2008.1.26 絶版 歌舞伎、旅一座、万葉、平家、など和風な材料で毎度ながら優美に仕立てられている。品あるタイトルを眺める娯しみも毎度ながら。感情に潮を重ねたエロティクなイメージ(満ちたり引いたりいろいろで…

ウルトラマリン

【ウルトラマリン】レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 中央公論新社 ★★★ 2008.1.25 村上春樹翻訳ライブラリー 小説に接近していて、挿話集といった感じ。こんな風に、日々を綴ることを続けていくのは、よっぽど特殊な握力の持ち主だと思う。それこそ雲を掴…

魔的

【魔的 Magical Words behind Me】森博嗣 中公文庫 ★★★★ 2008.1.22 詩集。抜群に感じるのは、終盤の二篇「人の形」「星に願いを」。次点で、「雪が降る夜は」「原石を拾ったのに」「最後の呪文を唱えてごらん」「十牛」といったところ。「電波が好き」あたり…

龍宮

【龍宮】川上弘美 文春文庫 ★★★ 2008.1.21 正直あまりパンチを感じられなかったが、一冊の本としてのテーマ性はとてもしっかりしていて、並んだ目次を眺めてもわかるが、なかなか面白い試みになっている。初めて倉橋由美子と作品印象がリンクした。異形のも…

死のクレバス

【死のクレバス アンデス氷壁の遭難】ジョー・シンプソン 中村輝子訳 岩波現代文庫 ★★★★★ 2007.12.18 読了後知ったのだが、映画「運命を分けたザイル」の原作はこれだったらしい。 圧倒的迫力に満ちた記録。両手でしがみつくように本を握って、吹雪の中を行…

金色夜叉(上)

【金色夜叉(上)】尾崎紅葉 岩波文庫 ★★★★ 2008.1.3 ユニコーンの大迷惑という曲の歌詞に「僕はカンイチ君はオミヤ」というフレーズがあるが、しばらく読み進んだ時に、この作品が元ネタだったか、と気付いた。また、丁度この本を読んでいる時に、友人が「…

魔剣天翔

【魔剣天翔 Cockpit on Knife Egde】森博嗣 講談社文庫 ★★★ 2007.12.29 Vシリーズ 相変わらず保呂草が良い。謎めいている。 今作は、表立った行動力を毎度見せ付けるのキャラがあまり盛んに動くことなく、周辺の登場人物やあまりその行動を描かれなかった人…