yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

悪魔が来りて笛を吹く

悪魔が来りて笛を吹く横溝正史 角川文庫 ★★★★ 2005.9.17 

金田一耕助ファイルシリーズ

 

 一つ前に読んだ「死体が冷めないうちに」を受けて、装丁家繋がりで読んだ。

 このシリーズを読むのは四冊目だが、今回は当面の事件のルーツを探るべく、積極的に遠方に捜査の足を伸ばすので、中盤のリズムが大いに変わり、これまでと比べて(八つ墓・本陣・獄門と比べて)新しさを感じた。そのために事件が、探偵の口先だけに留まらない過去の厚みを持ち、重量のある作品となっていたように思う。

 相変わらず犯人は当てられず、欠損した指から、タイプライターとの関係ばかり考えていたら、最後の最後に上手くしてやられた。今回はタイトルも上手ければ、殺人の前にどこからともなく流れてくる笛の音、という“絵”にも吸引力のある詩美性があって、満足度の高い作品となった。