【転生】貫井徳郎 幻冬社文庫 ★★★★ 2005.9.20
心臓移植手術を軸に据えた、所謂社会派的な王道のミステリー(ミステリではない)だった。謎はへび玉のように予想も出来ない方向に伸び膨らむ。
手術を受けた主人公の体調の回復に合わせて、物語展開が実に丁寧に加速していく。氏の初期作品では、多視点のカットバックが多く見られたが、この作品では主人公の一視点で時間軸もほぼ一軸である。どんなつまらない話でも、構成次第で見られる物にすることができる(のではないか)、ということを思うと、それをしなかったこの作品は、プロットを前面に押し出した真っ向勝負の意気込みを感じさせる清々(すがすが)しい作品であった。
貫井氏を薦めるに、人を選ばないのはこの作品だろう。
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へび玉を知っていますか。