yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

山椒大夫・高瀬舟 他四編

山椒大夫高瀬舟 他四編】森鷗外 岩波文庫 ★★★★ 2005.1.23

 

 森鷗外初読。鷗外のことを謳ったなかなか良い曲があるので、どんなものなのか、と思って読んでみた。漢字と妙な片仮名に直した外来語を多用する難解な文章を書く人かと思いきや、この短篇集に於いては理解に易しい文章であったし、何より全6篇テーマとストーリィの質が非常に高かった。収録作品は丁度一年程の間に書かかれたものというから驚く。歴史の中からこれ程テーマ性の高い逸話を見つけ出してくる手腕と、それらを惜しげもなく用いて、自己作品に昇華した密度の高い一年。同時代に生きて読んでいた人々は贅沢だ。
 山椒大夫は、海坊主ならぬ山坊主のことで、安寿と厨子王を山の向こうとこちらに引き裂くと言った或る種の妖怪譚と想像していたら、さっぱり違った。
 山椒大夫と、魚玄機の最初の一頁を読むと、大極宮というHPが少し分かるようになる。