yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

富士

【富士】武田泰淳 中公文庫 ★★★★ 2010.1.15

 

 年末年始の一冊として、重厚な作品でもと思い、本書を採った。ここまでくるのは長かった。というのは、武田百合子氏の「富士日記)()()」をとにかく読んでから本書を読もうと思っていたからで、「富士日記(上)」を手に取ってから実に4年半越しに思いを果たしたことになる。

 さて本書は、(前情報をほとんど入れずに読み始めたので)意外にも富士山麓の精神病院を舞台にした話であったので、頭の一方に、実に良く似た設定であった「魔の山」を常に置き、対照しながら読んだ。山は山でも、富士は観世音的な存在。人の生、動物の生を遥か見下ろし、いつも静かに笑っている。厳しさもないが、人を贔屓するような優しさももちろん持ち合わせていない"非"劇的な存在の、あまねく行き渡る眼差し……。視野狭窄の日々に、噛み締めるべきはこれか。

 

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 「魔の山(上)」・「魔の山(下)

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