yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

ヘルダーリン詩集

ヘルダーリン詩集】川村二郎訳 岩波文庫 ★★★ 2005.6.25


 基本的に自然を詠むところから始まる。が、詠む対象を見える姿そのままに、というだけでは決して留まらず、その延長を空間的にも時間的(歴史的)にも縦横に補外させていく想像力の飛翔が素晴らしい。内面の豊かさの賜物だろう。

 ヘルダーリンの詩人としての同一性が読み取れる詩篇も幾つかあって、どうやら1800年頃のドイツには、詩人の居場所がちゃんとある時代だったらしいことが感じられる。

 「ボナパルト」が良かった。詩で受け止めるには大き過ぎる、とある人物の精神を詠(うた)った一篇で、気持ちの良い負けがある。