【しゃべれども しゃべれども】佐藤多佳子 新潮文庫 ★★★★ 2005.6.29
412頁5~6行目にかけての「新しいノート~気持ちになった」という部分がなかったら星5つかな。信頼できるある書評サイトの管理人のお薦めの本だったので読んでみたら、見事に当たり。お薦め度なら星5つ。安心して万人に薦められる。
まず何しろ温かみがある。それに登場人物を造形の上手さ。それぞれの人物に対しスタイル・性向・思考にコアな部分を明確に持たせ、かつ絶妙な揺らぎのある輪郭を併せ持たせている。この作品を読んだ誰もが自分に似た人物を見つけ出せるのではないかと思う。そしてハートウォーミングなストーリィ。必要以上に弛緩させず、きりっとして粋な場面や台詞できっちりきっちり描いていると感じた。
ストーリィの始まりと終わりで何か大きな変化が起きるわけでもない。普通の人はそれに気付いてもすぐに忘れてしまって、いつまでも大事に抱いていられないようなちょっとした変化がこの作品には描かれている。