【ヰタ マキニカリスⅠ】稲垣足穂 河出文庫 ★★★ 2005.8.23 絶版(∵旧装版)
異端・幻想の作家ということで気になっていた稲垣足穂を読んでみた。
一読、お月様や星、ほうきぼし、手品・魔術、神戸の街に大変なこだわりがあることが分かる。正直なところ重複し過ぎる素材に食傷してしまったが、これは編集に問題があるかも。
中では童話的な「チョコレット」と、足穂が月や星を嗜好する発端が書かれているらしい「天体嗜好症」が良かった。「チョコレット」には子供時代の宝物を描くかのようなきらきらした雑貨描写が眩しい。カタカナ名の登場人物の言葉や動きもゼンマイ仕掛けのおもちゃめき、カチコチとした四角や三角の角(かど)を感じる。「天体嗜好症」は、足穂本人の性向(について仕入れてしまった情報)を踏まえると、お月様やほうき星を好きだと宣言するのは可笑しいのではないか、というくだりがちくりとくる。世の中には、好きなものを好きだと言うことに、何のためらいも感じない人やそうでない人、そもそも意味を感じない人などがいるのである。
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craft-ebbingという言葉が「或る小路の話」に出てきた。