【てのひらの闇】藤原伊織 文春文庫 ★★★ 2005.8.27
長篇ハードボイルド。謎が次々に湧き出てくる前半は大変面白く読んだが、解決篇の後半は経済問題(金銭貸借、不動産、名義がなんだかんだ)などが事件の核に絡んでいることが分かって、それが苦手な分野だけに十分に理解が追いつかず、感動が散漫してしまったのが痛かった。
読んでいて一番面白く気にかかったのは、課長と大原の関係。理性的な大原、口調が俗に堕さないところが良い。欲を言えばもう少し見せる隙を限定して欲しかった。
石崎の言葉や、糸くずなど、伏線が作る長波長の味わいはあるが、「雪が降る」と比べるとどうしても弱い。