【葦と百合】奥泉光 集英社文庫 ★★★ 2006.1.14
ミステロイドという言葉に倣えば、この作品はノベロイドといったところか。 断片は面白く、相変わらずの軽妙さと堅苦しさの入り混じる語り口は好みなのだが、無目的で長大な虚篇、無い核を囲うがらんどうである。解説は読まないほうが良いと思われる。読了後、段々と空しい気分になった。
この作品の後には、何をやりたいのかはっきりしている作品――例えば「バナールな現象」のような――も出ていることから、習作として作者自身においては成功だと言えるのかもしれない。