【百頭女】マックス・エルンスト 巖谷國士訳 河出文庫 ★★★★ 2008.10.10
エルンストを知ったのは、確か「幻想の肖像」のおかげかと思う。
コラージュによる小説。ありがたいことに一絵一絵毎にキャプションがあるので、理解あるいは解釈の助けになる。これが、次に読もうと思っている「慈善週間または七大元素」になると、キャプションがなくなるので、本読みには、より難しいものになりそう。だから、という訳ではないが、この作品を読む前後から絵画に少し意識的に触れてみようということで、行動パターンに変化が齎された。
もう一点、ひゃくずおんな、と読むものと思っていたら、世間的には、ひゃくとうおんな、が一般的らしい。読み方はともかく、その意味するところは、漢字の通りである。原題は、「La Femme 100 Têtes」。
さて、内容だが、無茶苦茶なので何とも言いようがない。この本に自分の感想の一々までキャプション化して織り込めば、どのページも「………」となろう。ただ奇妙に後引くので、おごそかな袖をひろげる百頭女や気紛れなロプロプが網膜に時々移り込んだり、何かを見れば“惑乱、私の妹、百頭女”とつい呟いてみたくなったりする。
「カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢」の復刊を望んでいる。