yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

超現実主義宣言

【超現実主義宣言】アンドレ・ブルトン 生田耕作訳 中公文庫 ★★★ 2009.7.4

 

 この本、表紙が良く、1920年代のソビエト無声映画ポスターを思わせる。その"思わせる"時代は、もちろん超現実主義宣言(第一宣言)がなされた1923年に重なっている。

 絵画の方面から入った超現実主義思想だが(超現実主義と相対性理論は、その言葉がナンなのか分からなくても、幼な心にはまるで取り憑くかの如く熱く焼き付き興奮させてしまう効用があると思う)、そろそろ詩や小説の方も読んでみるかと思い、まずはこの本を手に取った。が、とにかく分かりにくい文章で(単語や文節のコラージュだと解釈しよう)、第一宣言の後半部の超現実語を行使した具体例を示した辺りを除くと、まあほとんど頭に入ってこなかった。たまに分かりやすいな、と思った箇所は、他所で引用されたのを既に目にしていたり。確かにそんなところしか引きようがないよなと思う。

 自動筆記は、キータイプによる高速筆記時代の今が大変実行しやすい時代。それはそれとして、自動筆記による文章のうち、長文・長編で、全体に求心力を持続させるものがあるだろうか、とても不可能事のように思える。どこか警戒心を抱きながらも、「溶ける魚」や「ナジャ」、「超男性」などを読むときを楽しみにしている。