yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

星降り山荘の殺人

【星降り山荘の殺人】倉知淳 講談社文庫 ★★★★ 2005.2.5

 

 「壺中の天国」に大変通じるものがある作品だった。要素数がほぼ一定の集合の積をとっていくという風の犯人の絞り込み方の独特の緩やかさと丹念さ、茶化し具合の裁量の上手さ、異常心理とそれを具現させる嫌悪感を抱かせる言葉の作り方……。倉知淳岩明均「七夕の国」の主人公のようなテンションと馬面の文章を書くのだが、その作品中のここぞという場面に嫌悪感を抱かせる言葉を使う時があって、不意に恐い作家だと思う。

 巻末に先行作品だとの引用のある都筑道夫「七十五羽の烏」は、いつか読まねばなるまい。