【夢野久作全集2】夢野久作 ちくま文庫 ★★ 2005.5.9 「街頭から見た新東京の裏面」
および「東京人の堕落時代」所収
全集第2巻は、氏の記者時代の関東大震災後の東京のルポタージュ。折り良く先日読んだ「ハーメルンに哭く笛」と時代が重なっていて、フィクションとノンフィクションの両面から、帝都の騒雑としてどぎついネオンの靄に沈溺した雰囲気を十二分に堪能する結果となった。ただかなり食傷気味。「ハーメルンに哭く笛」での柏木のように、氏も新聞記者としてペンの力への信心が見られ、書き振りがとても人間臭い。
90年程も昔のことだけれど、東京に対する地方人その他の言い種が、現在においても共通して聞こえるところであったりと、いつの時代も変わらないなあと生意気にも思った。例えば、江戸っ子はもうこの時代にしていなくなった、との言い。
中では、江戸っ子探しと不良少年少女の秘密めいたやりとり調査の章は面白く読めた。
ところで、東亰(とうけい)もの、とも言うべき作品を幾つか読んできたことだなあと不意に思った。