yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

光車よ、まわれ!

【光車(ひかりぐるま)よ、まわれ!】天沢退二郎 ブッキング ★★★★★ 2005.11.11

 

 天沢氏初の長篇作品。私が氏の長篇を読むのも初だ。

 先に読んだ「闇の中のオレンジ」と大いに重複する道具立てが気にはなるものの、矢張り長篇ならではのしっかり筋の通ったストーリィテリングがまずあり、その範疇を決して逸脱しないような至極丁寧な道具配置がなされている。迫りくる闇に緩急がありながら段々と大潮が近付く。それに対する龍子らのグループが団体行動もすれば予期せぬ単独行で勇気を試されたりもする。どきどきの冒険譚であった。

 小学生の頃というと、もう大して覚えていることもないのだけれど、些細な出来事や思いつき/発想なんかで、世界は直ぐに暗転し、恐怖に身を竦(すく)ませることがしばしばだったように思う。両親や兄弟の消失、血の赤、知らない大人たちの視線、流しに響く水滴の音、留守番の時の電話の呼び鈴、布団にもぐりこんで見る襖(ふすま)から洩れる光。そんな諸々事ことを思い出させる。