yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

夢の通い路

【夢の通い路】倉橋由美子 講談社文庫 ★★★ 2005.11.25

 

 桂子さんに既視感があるなと思ったら、やはり「よもつひらさか往還」でも桂子さんはいた。同一人物のようでもあり、そうでない感じも受ける。その曖昧さは村上春樹氏の“ぼく”のような面白さがあるけれど、まあ単に物語上の変数PとかQとして静観するのも好き好きだろう。

 桂子さん譚の連続17譚が、つるつると読めて良い。今回は和歌が度々引き合いに出され、理解が至らないことも多かったけれども、その後必ずと言って良い程に挿入される艶の雰囲気はしっかり堪能した。

 「慈童の夢」での定家への桂子さんの観察眼に瞠目――自分の内側に向かって棘を生やして居心地悪そうにしている。