【カー短編全集1 不可能犯罪捜査課】ディクスン・カー 宇野利泰訳 創元推理文庫
★★★ 2005.11.18
10篇を収める。翻訳物で短篇ミステリというどちらかと言えば二重に苦手な作品だが、1篇当たりのページ数が短いので何とか手に取ってみた。
「新透明人間」は、トリックを実用する動機が物語の初めと終わりをきれいに張り合わせる感に面白味があった。
「空中の足跡」と「めくら頭巾」は特に怪奇趣味が光る。噂に聞くこういった雰囲気がカーの持ち味かと思った。
「もう一人の絞刑吏」は、間もなく絞首刑に処される者がどうして殺害されなければならないか、というなかなか興味深い設定がなされる。興味深いとは言え、同じ設定を最近の作家の作品で読んだ気がするのだが、思い出せない。山口雅也「生ける屍の死」は似ていなくもないが、それではないという確信がある。何だったか。
それはそうと、全般にシチュエーションに凝ってあり、変化に富む作品集だった。