【中井英夫全集[12] 薔薇幻視】中井英夫 創元ライブラリ ★★★★ 2005.11.24
薔薇ならぬ薔薇の旅と、香りへの旅から成る言わば精神紀行記。非常に流麗な文体は、冷やっこくて這うように香う。特に章の切れの文。余白に儚く溶ける。
私なりに理解したところによれば、薔薇と香りは美に於ける双対である。すなわち、薔薇は完全な造型、ただしここではないかしこにて秘めやかに結晶する。そして香りは形ないものの完全な美、ここにあって終に掴めない。
春に欧州にでも行こうかという話がある。密かに薔薇ならぬ薔薇の旅を目論んでいるが、どうなるかはまだまだ分からない。