yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

読んだ本

バーのある人生

【バーのある人生】枝川公一 中公新書 ★★★★ 2009.5.10 こういう本を読み始めたら、(何かが)"終わりだ"という気もしないではないが、読んでみればやはり興味ある話がてんこ盛りで、人に勧める気には全くならないが、瞬く間に栞でいっぱいになった。あとで、…

蚊トンボ白鬚の冒険(下)

【蚊トンボ白鬚の冒険(下)】藤原伊織 講談社文庫 ★★★★ 2009.5.8 登場人物のほとんどについて、次第次第に関係が整理されてきて、いざクライマックスに迎える。アクションシーンの勢いは、同じ乱歩賞作家である首藤瓜於「脳男」を思い出させた。主人公の達…

蚊トンボ白鬚の冒険(上)

【蚊トンボ白鬚の冒険(上)】藤原伊織 講談社文庫 ★★★ 2009.5.5 続けてハードボイルドいってみるか、ということで藤原伊織。 経済・金融に関連した事件の背景、半知半解のまま、週刊少年漫画雑誌さながらの速度で読み進む。

シティ・オブ・グラス

【シティ・オブ・グラス】ポール・オースター 山本楡美子・郷原宏訳 角川文庫 ★★★ 2009.4.24 ニューヨーク三部作の一 三部作のうち最後に読んだのが本書(二作目/三作目)。連続した話ではない(二作目と三作目はやや関係ありだが連続はしていない)から、…

最暗黒の東京

【最暗黒の東京】松原岩五郎 岩波文庫 ★★★ 2009.4.27 明治中期の東京貧民街潜入ルポ。貧乏譚が好きなので手に取った。この心裡、所謂上から目線の快を催すためであろうか。貧乏が窮まって悲惨・凄惨ただ一つの体を示すようになると、さすがにフィクションで…

夢野久作全集7

【夢野久作全集7】夢野久作 ちくま文庫 ★★★★ 2009.4.21 「暗黒行使」(ダーク・ミニスターと読むのが定説)を収める。この一長編で一冊。長編の割に、知名度が低いのか、この作品についての前情報は全く見聞きすることがなかった。 冒頭から結末までの、物…

イノセント

【イノセント】イアン・マキューアン 宮脇孝雄訳 ハヤカワ文庫 ★★★★ 2009.4.20 絶版 「アムステルダム」でも目立った分析的な筆が、今作でも充分発揮されていた。p.208の"本当はこれまで考えていた以上に面白みのある人間で、世馴れたところもあるらしい。"…

魔の山(下)

【魔の山(下)】トーマス・マン 関泰祐・望月市恵訳 岩波文庫 ★★★★★ 2009.3.14 或る船の中で、読み終えた。晴天の霹靂に触発され飛び出して行ったハンス・カストルプ見た様な、たぶん丁度、自宅を出てどこか飛び出して行きたい、行くべきタイミングだったよ…

『吾輩は猫である』殺人事件

【『吾輩は猫である』殺人事件】奥泉光 新潮文庫 ★★★★ 2009.4.17 「吾輩は猫である」をやっと読んだので、遂に手を出すことができた本。元本に倣って、雑学的な情報量の多い垂涎の小説なのだが、詰め込まれているものにもう一つ特記すべものがあって、それは…

ソムリエ・バーテンダーになるには

【ソムリエ・バーテンダーになるには】大阪あべの辻調理師専門学校編著 ぺりかん社 ★★★ 2008.7.16 まとめると、ずばりバーテンダーになるには、スクールに通う手もあるが、とにかくバーで修行しましょう、ソムリエもほぼ同様、カクテルなどの技術よりも人間…

政治家の文章

【政治家の文章】武田泰淳 岩波新書 ★★★★ 2009.4.2 少し硬いタイトルだが、武田泰淳氏著ということで目につき、読んでみた。 いずれも戦争を経験した政治家の文章を取り扱う。信念という鉄板を有した(その人物なりに)正直者の文章やら、現役を退き脇の甘く…

ムッシュー・テスト

【ムッシュー・テスト】ポール・ヴァレリー 清水徹訳 岩波文庫 ★★★ 2008.9.12 「ノヴァーリス作品集Ⅰ」の読了後辺りで手を付けた。その頃、観念的な文章を脳が欲していたのだと思う。見方を変えれば、論理的な思考(そもそも苦手だと思っている)力が特に弱…

ガリヴァー旅行記

【ガリヴァー旅行記】スウィフト 平井正穂訳 岩波文庫 ★★★ 2009.3.30 旅行に携行する本を選ぶとき、私は旅行記を選ぶ傾向があるのだが、これもそのように読まれた一冊。 各所で註釈を引くと、スウィフトの時代の諷しまくりの様がよくよく分かってくる。それ…

鬼会

【鬼会(おにえ)】赤江瀑 講談社文庫 ★★★★ 2009.3.29 7篇収録。いつもながらどの篇も端正な作りだが、本作は全篇特に質が高く感じ、何度も書くが赤江瀑作品にしばしば感じられる、毎度違うネタを扱っているのにどうしてこうも読み味が同じなのか、といった…

マイナス・ゼロ

【マイナス・ゼロ】広瀬正 集英社文庫 ★★★★★ 2008.12.25 読み終えて3ヶ月も経ってしまった。 タイムマシン物のSF。新装版として現在出回っている和田誠の装幀が大層似つかわしい、飄々としたテンポで展開する軽快な小説。話が進むに連れ、内容がかなりこんが…

吾輩は猫である

【吾輩は猫である】夏目漱石 岩波文庫 ★★★★★ 2008.12.17 漱石作品は中学・高校生の時に「坊っちゃん」を読んだきりであったが、森鴎外や奥泉光などの作品を読むうちに、そろそろ読み始める頃合のように思われてきて、まずはこれを手にした。 有名な冒頭文か…

魔の山(上)

【魔の山(上)】トーマス・マン 関泰祐・望月市恵訳 岩波文庫 ★★★★ 2009.2.2 見ればこれも1920年代の(1924年に出版された)作品であった。 厚い本。しかし、まえがきにあるように、(読了に)まさか7年もかかるまい、ということで、挑戦的な気持ちで読んで…

朝鮮短篇小説選(上)

【朝鮮短篇小説選(上)】大村益夫・長璋吉・三枝壽勝編訳 岩波文庫 ★★★★ 2009.3.6 1920〜40年代に書かれた朝鮮小説。故郷の喪失(日本軍の侵略が原因)や貧困が、多く描かれる。下巻にみられた素朴な農村譚のような作品はなく、せめて筆は軽くあるものでも…

北村薫のミステリびっくり箱

【北村薫のミステリびっくり箱】北村薫 角川書店 ★★★ 2009.2.25 CD付き 乱歩らの肉声が聞けるというCD付きの本で、売り切れ御免な感じの宣伝で販売されていたので、えいやと思い買ってみた。分量はなく、二時間もかからずに読み切れるが、8ジャンルに渡る各…

鍵のかかった部屋

【鍵のかかった部屋】ポール・オースター 柴田元幸訳 白水Uブックス ★★★★ 2008.8.15 ニューヨーク三部作 “なんとなくハードボイルド”を期待していたわけだが、この本の原題は、少し考えれば分かる通り、「The Rocked Room」ということで、やはり広義のミステ…

夜叉ヶ池・天守物語

【夜叉ヶ池・天守物語】泉鏡花 岩波文庫 ★★★ 2008.7.13 夜叉ヶ池も天守物語も、読むのは二度目。講談社文庫の中井英夫氏が解説のものを、5年と少し前に読んだのである。だから、懐かしみながら筋の確認する感じで読んだ。天守物語冒頭における、天守閣からの…

若き詩人への手紙 若き女性への手紙

【若き詩人への手紙 若き女性への手紙】リルケ 高安国世訳 新潮文庫 ★★★★ 2008.9.29 前半は若き詩人への、後半は若き女性への往復書簡。リルケ自身はともかく、手紙をやり取りする相手まで、とても正直で、感情に従順な素敵な書き振りなので、それだけでほっ…

迷路のなかで

【迷路のなかで】ロブ=グリエ 平岡篤頼訳 講談社文芸文庫 ★★★★ 2009.2.19 目眩のする小説は、「ドグラ・マグラ」や「匣の中の失楽」、「ペニス」、「バナールな現象」など、これまでいくつか出会ってきたのが、その系列・類いに属するこの作品はすごい。頻度…

富士日記(下)

【富士日記(下)】武田百合子 中公文庫 ★★★★ 2008.9.23 第17回田村俊子賞受賞作 胸が締め付けられそうなエピソードでいっぱい。武田(夫の泰淳氏)の健康がどんどん悪化していく。本の終わりが、武田の終わりかと想像されて、頁を繰りたくなくなってくる。…

脳が冴える15の習慣

【脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める】築山節 生活人新書 ★★★ 2009.2.16 やはり日頃より人に相対する職業者の書く文章は分かりやすい。脳を活性化させる具体的方法について簡潔にまとめてある。新書らしさ全開というか、章題を見直しただけで、…

太陽王と月の王

【太陽王と月の王】澁澤龍彦 河出文庫 ★★★★ 2009.2.9 2頁ばかしのものから長くても13頁のものまで、の雑多でしまりのないエッセイ集(「架空対談*サド」だけは19頁だがエッセイに入るのか疑問なので別扱いで考えた)。だから、目次の頁をいつものように注視…

玉蟲遁走曲

【玉蟲遁走曲】塚本邦雄 白水社 ★★★★ 2009.2.3 絶版 昨年末より塚本邦雄氏が気になって仕方なくなっていた。主な理由は2点、旧字旧仮名遣いに圧倒されてみたい、そして、詩人の書く小説・エッセイに名品が多いらしい(という噂)、というところ。氏のほとん…

朝鮮短篇小説選(下)

【朝鮮短篇小説選(下)】大村益夫・長璋吉・三枝壽勝編訳 岩波文庫 ★★★ 2009.1.28 上下巻同時に入手して、ある時間違えて携えていったのが下巻だったので、下巻から読むことになった。特に支障はないけれど、自分にしてはちょっと珍しい出来事。 朝鮮半島出…

神曲 煉獄篇

【神曲 煉獄篇】ダンテ・アリギエーリ 寿岳文章訳 集英社文庫ヘリテージシリーズ ★★★ 2008.9.8 11ヶ月振りに、ダンテの旅の続きに付き合う。 さて煉獄については、地獄や天国に比べてあまりにも予備知識がなかったので、その辺りの基礎的なところから勉強に…

百頭女

【百頭女】マックス・エルンスト 巖谷國士訳 河出文庫 ★★★★ 2008.10.10 エルンストを知ったのは、確か「幻想の肖像」のおかげかと思う。 コラージュによる小説。ありがたいことに一絵一絵毎にキャプションがあるので、理解あるいは解釈の助けになる。これが…