【盤上の敵】北村薫 講談社文庫 ★★★★ 2005.4.25
心的状態が我ながら良く思える日々が続く。今ならどんなに容赦のない物語にでも耐えられるだろうと思い、やっと手を出せた一冊。
絶対悪の存在。不条理な暴力。対する正義。それだに傍から見れば絶対善ではなく利己的な正義かもしれない。予想されたテーマ性の強さは確かにあったが、そこは北村薫、巧みな構成とストーリィテリングの妙で、そのものは決して型崩れしない重いテーマをまわりから柔らかに撫で上げ、確固とした読み物に、そして第一級のミステリに昇華している。
藤原勝紀氏の講演会での言、内界のエクメーネの拡大、が北村作品の経験によってどんどんと為されていくように感じる。