yh氏の日記

主に買った本を、メモがてら、ずらずら書いていきます。他に言葉集めなど。過去記事鋭意編集作業中。

八雲が殺した

【八雲が殺した】赤江瀑 文春文庫 ★★★★ 2005.4.29 第12回泉鏡花文学賞受賞作 絶版

 

 赤江瀑初読み。司修氏によるカバー絵とタイトル・著者名の書体がポップなので、ほんわかした作品集だと思ったら大間違い。寺社の密事、刀、手裏剣、七宝、怪談、和歌、三味線などなどの素材を元に、和の味の濃い怪奇幻想と恐怖の珠玉集であった。読み易い泉鏡花といった風。はまりそうな作家だとの手応え充分で、現在氏のものでは二冊のストックがあるが、今後も継続的に探していこうと決意を新たにした。

 比較的古風な素材たちに対し、現代の物語の中での適当な居場所を、もうそこしかないと思わせるような居場所を与えてやるのが上手い。

 レトリックについては、解説で確然と言い得ていて、これ以上言を費やしても詮ないが、花の使い方が私的には新鮮であった。もっと花を知らなければ。引用された花のほとんどは見、触れたことのないもので、付帯するイメージが湧いてこないのは空哀しいものである。